このページでは、井上靖ゆかりの場所を実際に訪ね、その様子を記録した動画へのリンクをまとめた。
井上靖の作品は、特定の土地や風景と深く結びついているが、作中ではそれが詳しく説明されることは多くない。実際の場所を歩いてみることで、作品を読んだときの印象が、少し具体的になることもある。
本ページに掲載した動画は、作品を解説するためのものではなく、読書の参考資料の一つとして位置づけている。
動画リンク一覧
魚津恭太と小坂かおるが歩いた上高地の散策路を、現在の風景とともに記録。小説に描かれた沈黙が自然の中に重なります。
井上靖の名作小説『氷壁』。その作中で、主人公の魚津恭太と小坂かおるが歩いた上高地の道のりを辿ります。出発点は、上高地の象徴ともいえる「河童橋」。そこから梓川の清流を傍らに、二人が目的地とした「明神」へと向かう散策路を、実際の美しい風景とともに映像に収めました。穂高連峰の雄大な稜線や、透き通った梓川のせせらぎ、そして静寂に包まれた森の空気。それらは、小説の中で描かれた二人の孤独や、言葉にできない切ない感情を今も静かに物語っているようです。兄・小坂乙彦の捜索のために向かった上高地行。文学の香りが漂う自然の情景を通して、『氷壁』の世界観を追体験していただければ幸いです。聖地巡礼としてはもちろん、上高地の豊かな自然を楽しみたい方にもご覧いただきたい映像です。
1958年、井上靖が滞在し『海峡』の結末を書いた下風呂温泉を訪ねる。雪と海に囲まれた温泉地の静けさが印象的。
本州最北端の湯治場として知られる青森県・下風呂(しもふろ)温泉。この地は、文豪・井上靖が1958年に滞在し、名作『海峡』のラストシーンを執筆した場所として知られています。動画では、井上靖が実際に宿泊し、執筆に耽った「長谷旅館」や、彼の功績を称えて建立された「海峡いさりび公園」の文学碑を訪ねます。碑に刻まれたのは、渡り鳥「アカエリヒレアシシギ」に寄せた一節。「これはいま、日本の匂いを嗅いでいるのだ」という言葉通り、厳しい冬の寒さの中に漂う温泉の湯煙と、海峡の情緒が交差する独特の世界観を辿ります。
晩年の代表作『星と祭』の舞台、琵琶湖北岸・湖北地方を巡る。喪失と祈りを包み込む土地の空気が伝わる。
井上靖が晩年に執筆した名作『星と祭』。愛娘を水難事故で亡くした主人公が、滋賀県・湖北の地に点在する十一面観音を巡り、深い喪失感の中から再生へと向かう物語です。本動画では、作中の舞台となった琵琶湖北岸の静謐な情景を辿ります。日本一の美しさと称えられ、戦火から村人たちの手によって守り抜かれた国宝「渡岸寺(向源寺)十一面観音」をはじめ、湖北に息づく観音信仰の聖地を訪ねます。また、井上靖がこの地をこよなく愛した縁で設立された、高月図書館内の「井上靖記念室」も紹介。執筆当時の息吹を感じさせる資料とともに、なぜ文豪がこの湖北の地に魂の救いを見出したのかを紐解きます。
1950年代以降、長く暮らした世田谷区桜の旧居跡。名作を生んだ欅の木が今も残ります。
東京都世田谷区桜。かつてこの地には、日本を代表する文豪・井上靖が30年以上にわたって居を構えた邸宅がありました。1951年からこの地に住んだ井上靖は、ここで『天平の甍』『楼蘭』『敦煌』といった数々の歴史小説を世に送り出しました。特筆すべきは、旧居跡の近くに今もそびえる大きな欅(けやき)の木です。この木は短編小説の題材にもなり、井上靖が日々目にし、慈しんだ風景の一部でした。当時の書斎は現在、彼の故郷である北海道旭川市の「井上靖記念館」に移築・再現されています。
「天体の植民地」と表現された、星に近い集落。静寂と厳しさが共存する土地を巡る。
井上靖が「天体の植民地」と表現した、星降る山里。短編小説『通夜の客』の舞台となった、鳥取県と島根県の県境、中国山脈の稜線に位置する美しい集落を訪ねます。モデルとなった鳥取県日南町の旧福栄村や、伯備線・上石見駅周辺の静謐な風景を映像に収めました。作中で重要な役割を果たす「曽根の家」を彷彿とさせる佇まいや、夜になれば今にも星が降り注いできそうな、高く澄み渡った空。そこには、文豪が「天体の一部」と感じた孤独で美しい風景が今も息づいています。
再現された書斎やシルクロード資料を紹介。歴史小説とアジアへの関心が浮かび上がります。
鳥取県米子市にある「アジア博物館・井上靖記念館」を訪ねました。1989年に開館したこの場所の見どころは、井上靖氏の書斎を忠実に再現した展示です。愛用の机や椅子、壁一面の蔵書、自筆原稿などは、今にも文豪の息遣いが聞こえてきそうな臨場感に溢れています。また、併設のアジア博物館には『楼蘭』や『敦煌』の世界観そのものと言えるシルクロードの貴重なコレクションが揃います。文豪の創作の原点と、彼が終生魅了され続けたアジアの歴史ロマンを体感できる空間です。
旧制沼津中学へ通った下土狩駅前。自伝的小説世界への入口となる場所です。
下土狩駅は、井上靖が旧制沼津中学校に通うために毎日利用した、まさに青春の舞台となった場所です。『しろばんば』『夏草冬濤』『北の海』に登場する主人公・伊上洪作の多感な日々を象徴するように、駅前には学生帽姿の少年像が立っています。2007年に建立されたこの像の台座には、「はじまりは 出会いに 他ならない」という言葉が刻まれています。一人の少年が文豪へと歩み出した記憶が交差する、心温まる文学スポットです。
『しろばんば』の原風景。おぬい婆さんと暮らした家と、伊豆近代文学博物館を紹介。
文豪・井上靖が幼少期を過ごした湯ヶ島の旧邸を訪ねました。現在は「昭和の森会館」内に移築・保存されており、明治23年に建てられた当時の面影を残しています。洪作少年とおぬい婆さんが深い絆を育んだ空気感が、古い木造家屋の佇まいから静かに伝わってきます。併設の文学博物館では、井上靖や川端康成など伊豆を愛した文豪たちの貴重な資料を展示。四季折々の自然と文学の香りが漂う、湯ヶ島の情景をお楽しみください。
自筆原稿や初版本などを通して全体像を俯瞰。井上文学を体系的に知る拠点です。
愛鷹山の麓に位置する「井上靖文学館」。1973年に開館されたこの館内には、『あすなろ物語』や『しろばんば』の自筆原稿、取材ノートなどが多数展示されています。特に映画化作品のポスターや教科書に掲載された場面の紹介など、幅広い世代に愛される作品の魅力を多角的に知ることができます。美しい緑に囲まれた静かな空間で、井上靖が描いた瑞々しい感性と、壮大な歴史ロマンの世界に浸ることができるスポットです。
生誕地・旭川を巡り、井上靖通りと記念館を紹介。石をモチーフにした建築が印象的です。
文豪・井上靖が産声を上げた地、北海道旭川市。明治40年にこの地で生まれた彼を記念した「井上靖通り」や、石をモチーフにした美しい建築の「旭川市井上靖記念館」を紹介します。館内には世田谷区から移築された書斎や、ノーベル文学賞候補として注目された際の貴重な資料が展示されています。生誕の地がいかに作家の精神に影響を与えたのか。北国らしい情緒あふれる風景とともに、その足跡を辿ります。
四高への入学を目指した浪人時代。柔道修行の場、内灘砂丘などを紹介。
自伝的小説『北の海』の舞台、金沢を巡ります。旧制第四高等学校(四高)への入学を目指した浪人生活の中で、主人公・洪作が柔道の猛練習に明け暮れた日々を紐解きます。赤レンガの校舎、学生たちが闊歩した「W坂」、稽古の舞台となった「内灘砂丘」。寮歌や柔道部部歌の調べにのせて、かつての制帽・マント姿の学生たちが駆け抜けた「北の都」の熱い空気感を映し出します。人間形成の原点ともいえる青春の足跡です。
旧制沼津中学時代の舞台を辿る。下宿先、狩野川、千本浜を巡る青春の風景。
自伝的三部作の第二部『夏草冬濤』の舞台、静岡県三島・沼津。多感な中学生時代を過ごした主人公・洪作が通った通学路や、下宿先となった「妙覚寺」、議論を交わした「御成橋」、そして広大な「千本浜」の海岸線を辿ります。学生たちの情熱が爆発したストライキのエピソードなど、文豪の知性と感性が育まれた原風景を、時を越えて変わらない沼津の風光とともに映し出します。
物語の原点「上の家」や土蔵跡を訪問。ノスタルジックな少年の日々の記憶を辿ります。
自伝的小説『しろばんば』の原風景が息づく伊豆・湯ヶ島。本家である「上の家」や、洪作少年とおぬい婆さんが暮らした「土蔵」の跡地など、ファンにはたまらない聖地を丁寧に辿ります。夕暮れ時に白く舞う「しろばんば」に象徴される、孤独ながらも温かかった日々。晩年に自ら選んだという墓所も訪ね、作家の魂の拠り所であった湯ヶ島の美しい情景をお届けします。