芥川賞受賞作家であり、ノーベル文学賞候補にも挙げられた井上靖は、『闘牛』『猟銃』をはじめ、歴史小説『天平の甍』『敦煌』『風林火山』、自伝的小説『しろばんば』『あすなろ物語』など、多彩な代表作を持つ作家である。その作風は、一瞬と永劫、存在と虚無を見据える清冽な視線に貫かれ、ときに《白い河床》と評されてきた。
――作品を「横断的」に読むためのExcel整理ノート
芥川賞受賞作家であり、ノーベル文学賞候補にも挙げられた井上靖は、『闘牛』『猟銃』をはじめ、歴史小説『天平の甍』『敦煌』『風林火山』、自伝的小説『しろばんば』『あすなろ物語』など、多彩な代表作を持つ作家である。その作風は、一瞬と永劫、存在と虚無を見据える清冽な視線に貫かれ、ときに《白い河床》と評されてきた。
一方で、井上靖には歴史小説や自伝的小説とは別に、独自の輪郭をもった恋愛小説群がある。これらの作品は決して忘れられてきたわけではなく、固定した読者を持ち、折に触れて論じられてもきた。ただし、歴史小説や自伝的小説に比べれば光の当たり方はやや控えめであり、体系的に語られる機会が多くなかったのも事実だろう。
『氷壁』を金字塔とする井上靖の恋愛小説は、感傷や激情に流れることなく、男女関係の機微をきわめて冷静に、しかし鋭く描き出す。そこには過剰な説明や劇的な結末はないが、抑制された情緒と、読み終えた後に静かに残る余韻がある。珠玉の短編・中編が多いのも、この系譜の特徴である。
評論家の福田宏年は、井上の恋愛表現を「恋愛純粋培養」と呼んだ。恋愛を制度や肉体から切り離し、感情の核だけを抽出するその姿勢には、ある一定の型が認められる。
本サイトでは、その「井上靖における男女関係の型」を、かなり偏愛的ではあるが一覧表として整理・公開している。また、井上靖ゆかりの地を訪ねた動画へのリンクもあわせて紹介した。